如月五日
凍てつきしオリオン星座の散歩道ぽつけでつなぐ手と手の花園
如月十四日
日本海をつひのしとねと身を投げきなにの長寿ぞ九十九髪あな
如月二十二日
ひともとの豊後の梅を父植ゑきうすべに淡きかたみの花ばな
空を刺す枝落とさるる軒の梅バケツに灯す花のぼんぼり
しみじみとはるけき郷愁谷間の街はたそがれ夜空の星くず
如月二十三日
鶯のついとはねたる下野にさわらび食みき古木ことほぐ
那須の山名残の雪も消えゆきぬ狐の尾ふるさみどりの原
おぼろなるうつつを絶ちて山姥とならまし髪のおどろとどろと
如月二十四日
屋根やねはほのかな茜にふちどらる闇にしめりし沈丁花の香
如月二十六日
厚切りの牛舌とおろり葱スープ山から降りた男の笑顔
如月二十八日
濃緑に弱法師まとふ麻ごろも閃光ひとすぢ杖柱打つ