卯月四日
鶯の羽ふるわせて水光り黄色き蝶はわれにより来る
恋ひしのぶ魂かとぞ見ゆなかぞらに蝶のかそけき山吹薄様
卯月七日
亡きラムのトイレ洗いきまた一つ匂い消え失せ面影のたつ
白き毛のひとすじ本にはさまるる指にはかなきたまゆらの幾歳
流れ落つ遠止美(をどみ)の水にすすぎふる汝が影失せて白きあかとき
卯月十日
けをもれる白磁の上のいとよりは南の島の光なりけり
卯月十一日
言断ちし心に迷ふ一人闇ひそかに待ちて朱色の空洞
花野行き睦みし蝶にこひわたるひえびえ花散るぬばたまの夜
恋ひこひてまむかにこひし現世(うつしよ)の泡雪なりきうすばかげろふ
卯月三十日
常闇に汝(なれ)は去り行きうつそみの首輪かがやふ星の光年
待ちわびし心刻めりきざはしをかそけく踏みて吾(あ)を呼ぶ一声