平成壬辰 如月十一日
青南いきいきプラザ
今の吾を知る人のなし極月の穢(え)を抜はむと燧石うつ 光
死にし君へついに詫びごと伝え得ぬひとつばたごは花わきつづき 遊
日にかざし透ける石かと確かむる男の子はすでに王のまなざし 陽子
防人の歌はかなしも手離れを惜しみて泣ける東国の妻 芳恵
図書館を出で見わたせば南部坂欅向かふは夕焼けわたる 馬
羽子板の箸置きを拭きて懐かしむ郷里の膳母の面影 良子
なにげなく入りし画廊のみつからぬあの日のブーツに銀座歩めど 順子
音もなく白い世界が降りてくる息あるものを眠りに誘う 一道
不夜街と漆黒杜の境界で原宿駅は眠りにつけり 柾女